敷地は新興住宅地の規則的に区画割された一画にあたる。正方形に近いグリッド状に整理された規則正しい敷地区画とは相反し、新築の住宅群は類似性はあるものの、形態や色調の規則性、共通性は無く、自然発生する模様のようなランダムな風景にも見える。
このような街の一画における住戸は、周辺に調和することは困難であり、むしろより個として異質な存在を表現することで、そのランダムな風景にマッチングすると考え、住宅が立ち並ぶ中、玄関も良く分からない、無駄を削ぎ落としたシンプルな塊をポンっと置いたような、住宅らしからぬ異質を考えた。
異質を求める中、敷地の特徴である「規則正しい正方形」をこの場所の土着的な要素と捉え、建物のデザインルールに取り入れ、全体のシルエットから開口部に至る形状を「正方形」で整え、町と土地と住宅を繋げた。
住宅に絶対的必要な要素の「玄関」が、この家にはが無い。内部への入り口は縁側か、ガレージか、どちらかの開口部から進入することになる。また、バルコニーや縁側の庇等、生活上必要な機能が形となって表れない様、外に出すのではなく、全て内側に削り取るように空間を操作し、住宅としてのアイコンを削除することで、無くすことの異質な表情をもっている。
内部空間は大きな箱の中に小さな箱を散りばめ、壁面は出来る限り排除した。小さな箱の大きさに変化を持たせ、箱の中、箱の上等、その段差を生かして6層のフロア構成とした壁に依存しない空間は、視線の違いで個性を持ち、裏も表も全て使える多くの居場所を日常生活で活用することができる。
- 施工:有限会社武中建設
- 用途:専用住宅
- 所在地:京都府木津川市
- 構造:木造
- 規模:地上2階
- 延床面積:107.26㎡
- 竣工:2016年5月