小さな忍者の住む家

クライアントはご夫婦とお子様2人の4人家族。お子様を忍者に例え、忍者がグルグルと走り回り、時には隠れ、そして現れる。そんなアクティビティーが生まれる空間創りが、この住まいの概念である。

「外部環境」

本計画地は、幹線道路から少し入った密集した住宅地の中、周辺には取り残されたように雑木も残り、前面道路から奥に向かって広がるようなラッパ形状の特殊な立地条件である。日常の雑音からバッファを確保できる場所であることから、前面道路からなるべく離隔した場所に建物を配置した。

西から東へのアプローチの軸線上に佇む巨大な三角の壁面に玄関を設け、内部まで続く軸線のプロローグとなる仕組みを作り、アプローチ側から見える姿は際立った単純を目指し、内部の複雑さと対照的な姿とした。

「内部環境」

「団欒の間」を中心とし、「台所・食堂」、「畳の間」、「図書の間」、「床下の間」、「階段」、「廊下」が、空間に個性を持ちながら、連続する空間とした。それぞれの空間は、天井高さや床のレベルが異なり、そこから見える景色も異なる。全て見えるのではなく、見え隠れすることで、その空間に個性が宿り、そこからアクティビティーが生まれる。個々の空間で生まれたアクティビティーが、連続した空間で相乗することを期待した。

勾配を持った大屋根で全体を覆い、南側の開口を低く抑えることで、1階と2階の空間を分離せず、必然的に視線が団欒の間へ収束する構成とした。(相互的に)大屋根の構造体は表しとし、建物の力強さと、連続する梁の美しさを表現しながら、空間毎に見える景色の違いをより際立たせた。

竣工後、クライアントご友人家族が集まるパーティーに参加させて頂く機会があり、「団欒の間」に腰を据えて、しばし見学。

同年代の「忍者」達が、走って隠れて大騒ぎ。 躍動感のある期待した風景を見ることが出来、「小さな忍者の住む家」が実働していることに胸を躍らせた。

  • 施工:株式会社菰田建設
  • 用途:専用住宅
  • 所在地:愛知県豊橋市
  • 構造:木造
  • 規模:地上2階
  • 竣工:2015年